ひとコマ漫画を極める『カートゥニスト』を目指して

 地域ホームページ鳴海の人気マンガ「ナルミちゃん」でおなじみのにしわきコージさんは、プロの漫画家です。中日新聞でひとコマ漫画を連載しているほか、街中のポスター、パンフレットなどにも、親しみやすいシンプルなタッチのイラストがよく使われています。
 「最近ではさまざまな賞を受賞されて、すっかり巨匠になりましたね」と水を向けると、「だから逆にギャラが高いと思われて敬遠されちゃうんだよ!」との返事。気さくでユーモアたっぷりのインタビューをどうぞ。


―― 子供のころから漫画家志望だったのですか。
にしわき 中学校時代の友人なんかにはイラストレーターになりたい、とか言っていたみたい。要は勉強がダメだったから、他人と渡り合えるのは絵しかないわけ。図画工作だけが人並みで。
 高校を出てから1年間浪人時代があって、そのとき漫画を描いて雑誌に入選したんだよ。実はギャグの少女漫画でね。雑誌は『マーガレット』で8ページのストーリーもの。それで「漫画家になれるかもしれない!」なんて思ってさ。
 その後『少女コミック』でも連載をもらったりしたけど、人気商売だからそんなに甘いものじゃなかった。すぐに人気がなくなって切られたよ。幸いイラストの仕事もやっていたから、生活は何とかなっていたけど。
―― 今ストーリー漫画は描いていないのですか。
にしわき もうそんな体力がないよ。限界は4コマだね。新聞に毎日連載している4コマの漫画家さんはすごいと思う。毎日描くネタを探すわけだし、ボツになることもあるから、大抵2、3案は出しているからね。
―― にしわきさんもさまざまな賞を取っていらっしゃるじゃないですか。
にしわき "賞荒らし"はささやかな趣味だから(笑)。
―― 専門学校でマンガコースの講師もされていますよね。今、とても人気があるとか
にしわき 漫画家を目指す人は多いよ。漫画のほかにはメークアップが人気。料理人やゲームクリエーター、大工さんのように、職人にあこがれるのは、世の中の流れだろうね。
―― 今やサラリーマンでは夢が持てないからでしょうか。
にしわき 確かにそうだろうね。でも僕らのような職業は国家試験がないから、あやふやな部分はある。だから専門学校で基礎を学ぶのだろうけど。
 それにマンガコースといっても、グラフィックデザインもやればパソコンもやるので、就職口はいろいろあるわけ。もちろん、そのまま夢をかなえて漫画家になる人もいるけど。   
昔は切り貼りでマンガを作ったものだけど、今やパソコンですべてできる時代だから。時代は変わったね。
 ―― にしわきさんは仕事にパソコンを使っていないですよね。
にしわき まだ買ったばかりでさ。こうなったら"生きた化石"を売りにしようかな。でも僕のタッチなら簡単な線だから、パソコンでもそう難しくないかも。念のために言っておくけど、僕は『絵をいかに簡単に表現するか』をテーマに努力しているんだからね(笑)。ネタを思いついた段階で『描き込まなくてはいかんな』という場合は、その時点でボツ。『説明を必要としない漫画』、これが理想だよ。
―― だからひとコマにこだわるわけですね。
にしわき 日本って、風刺漫画や政治漫画以外にあまりひとコマの世界がないから。ひとコマで勝負する『カートゥニスト』というジャンルが確立できればいいな。欧米や中東では一般的な存在なんだよ。
 漫画って本当に不思議な世界でさ。絵が下手でも味があっていい、という場合がある。うまいに越したことはないけど、それだけで極められるものじゃないんだよね。
 例えばデビューのころは下手でも、描き続けていればどうしてもうまくなる。そうすると漫画としては面白さがなくなったり。背景や人物のデッサンがゆがんでいることが、その漫画の雰囲気にピッタリ合って面白いとか。うまくなってはいけない場合もあるという、不条理な世界だね。だから普通の職人の世界とはちょっと違うんだよ。僕、意外にエライでしょ(笑)。
―― ありがとうございました。
 (インタビュー:岡橋秀樹)